一部企業による巨額損失隠し事件や巨額背任事件等で企業統治のあり方が問われていますが、社外取締役が過半数を占める「監査等委員会」制度の導入や親会社の株主が子会社の経営陣の責任を追及できる「多重代表訴訟制度」の創設などを盛り込んだ会社法の一部改正案が国会へ提出されました。
■会社法の一部改正案の概要
11月29日、第185回臨時国会に提出された会社法の一部改正案の要綱見出しは全部で27項目列挙されています。以下、主要な項目についてそのポイントを紹介します。
◎監査等委員会設置会社制度
ポイント:会社機関構成の種類として、新たに監査等委員会設置会社を創設するもので、取締役会及び会計監査人から構成されるものです。なお、この制度を採用する場合は、監査役を置くことは出来ません。
◎社外取締役及び社外監査役の要件
ポイント:当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと等も要件の一つとなっています。
◎発行可能株式総数
ポイント:公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができないものとされます。
◎特別支配株主の株式等売渡請求
ポイント:株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人が有している場合における当該者をいう。)は、当該株式会社の株主の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することが可能となるものです。
◎募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約
ポイント:募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合において、当該募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式会社は、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該契約の承認を受けなければならないこととされます。
◎社外取締役を置いていない場合の理由の開示
ポイント:公開会社、かつ、大会社が対象となりますが、社外取締役を置いていない場合は「定時株主総会において理由を説明しなければならない」こととし、役員の親族などは社外取締役に就任できないよう要件が厳しくなります。
◎会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定
ポイント:株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任等に関する議案の内容は、監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)が決定することとなります。
◎企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備
ポイント:取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備が求められます。
◎親会社による子会社の株式等の譲渡
ポイント:株式会社は、その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡をする場合であって、次のいずれにも該当するときは、当該譲渡がその効力を生ずる日の前日までに、株主総会の特別決議によって、当該譲渡に係る契約の承認を受けなければなりません。
(1)当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えるとき。
(2)当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
◎準備金の計上に関する特則
ポイント:吸収分割株式会社が吸収分割の効力が生ずる日に剰余金の配当(配当財産が吸収分割承継会社の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合等には、第445条第4項(剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならない。 )の規定は、適用しないものとされます。
◎株主代表訴訟の原告適格の拡大等
ポイント:親会社の株主が子会社の経営陣の責任を追及することが可能となります。
◎監査役の監査の範囲に関する登記
ポイント:監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社については、当該定款の定めがある旨の事項が登記事項として追加されます。
◎施行期日等
ポイント:公布の日から起算して1年6ヶ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
参照ホームページ[法務省]
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji