所得拡大促進税制見直し

来年度、平成26年4月から消費税税が8%に上がる事になったことは皆さんご存知だと思います。それと同時に消費税率引上げに伴う経済対策と成長力強化のための総合的な対策が必要であることから、民間投資を活性化させるための税制措置等について、通常の年度改正から切り離して前倒しで決定する事となりました。

税制改正の主な項目は、以下です。

•生産性向上設備投資促進税制の新設

•中小企業投資促進税制の拡充

•研究開発税制の拡充

•ベンチャー投資促進税制の新設

•創業促進のための登録免許税の軽減措置

•事業再編促進税制の新設

•事業再編等に係る登録免許税の軽減措置

•耐震改修促進税制の新設

•所得拡大促進税制の要件緩和

今回は所得拡大促進税制の要件緩和についてご紹介します。

現行の所得拡大促進税制は平成25年4月1日から平成28年3月31日までの期間内に開始する事業年度(個人事業主の場合は平成26年1月1日から平成28年12月31日までの各年)において、国内雇用者に対して給与等を支給し、以下の3つの要件を満たした場合、雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる制度です。

1)給与等支給額の総額が基準事業年度(平成25年4月1日以降に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度)から5%以上増加

2)給与等支給額の総額が前の事業年度以上

3)給与等支給額の平均(平均給与等支給額)が前の事業年度以上

簡単に言い換えると、新規雇用かどうかを問わずに従業員に対する給与・賞与を増やした場合に、上記の要件を満たせばその増加分の10%の税額控除が受けられる制度です。

1)については今回発表された税制改正大綱では、適用期間が2年間延長となり、5%の増加要件を以下の通り緩和されます。

平成27年4月1日前に開始する適用年度 2%以上

平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する適用年度 3%以上

平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する適用年度 5%以上

なお、この改正は平成26年4月1日以後に終了する適用年度について適用されますが、既に平成25年4月1日以降開始している進行事業年度にもさかのぼって適用され、すでに決算を終えている法人については、平成26年度に税額控除を上乗せすることができます。

また、3)についても改正が行われます。

これまでは、「国内雇用者」に対する給与を対象として、平均給与等支給額を計算していましたが、改正後は、以下が見直しとなります。

平均給与等支給額の計算対象が、高齢者の退職と若年者の採用による平均給与減少といった事情を考慮するため、退職者、再雇用者、新卒採用者などを除いた継続雇用者に対する給与等に見直し。

また、「前の事業年度以上」を「前の事業年度を上回る」に変更

この判定においては雇用保険の一般被保険者に限定される事になりますが、雇用者給与等支給増加額を計算する際には雇用保険の加入の有無は関係ないので、注意が必要です。

 

これらが確定すれば、例えば、5000万円の給与を払っている企業が、2%の給与アップ(100万円の給与アップ)をすると、100万円×10%=10万円の税額控除を受ける事ができます。現行の要件では、最初から5%給与アップ(250万円)が必要だったことを考えると、利用しやすくなるといえます。

なお、今回の内容は国会を通過するまでは正式な確定事項ではありません。

詳細についてはさらに検討が進められているようですので、また新しい動きがありましたら随時お知らせいたします。